マンションをフルリフォームしたいと思って費用を調べると、数百万円の施工事例もあれば、1,500万円を超える案内も見つかります。この差は、広さだけでは説明できません。壁や床をどこまで壊すのか、使える設備を残すのか、配管や断熱まで手を入れるのかで、工事の中身が違うからです。
70㎡前後のマンションで設備・内装・間取りを広く見直すなら、「1,000万円あれば全部できる」と決めずに計画することが大切です。この記事では、公式に掲載されている費用目安と施工事例を分けて紹介し、フルリフォームとスケルトンの違い、見積もりで抜けやすい費用、予算の調整方法を説明します。物件購入代金を含む総額ではなく、主に改修費を検討するための記事です。
マンションのフルリフォーム費用は、工事範囲を決めてから比べる
最初の目安として、70㎡を対象にした会社の公式案内を見てみましょう。いずれも全国一律の相場ではなく、各社のサービスや対象地域を前提とする数字です。
| 公式に掲載された費用情報 | 70㎡の金額 | 比較するときの前提 |
|---|---|---|
| リフォームプライスのスケルトンリフォーム目安 | 1,260万円〜 | 同社の標準的な工事を前提。内装・水まわり・断熱・設計施工管理経費などを含む案内 |
| リノベる。の首都圏利用者の実績に基づく費用案内 | 約1,600万〜2,200万円 | 同社サービスの利用実績。全国の全会社を集計した相場ではない |
| 同ページに掲載された「The R.」の費用案内 | 約1,100万〜1,300万円 | 仕様を絞った商品。自由に設備や素材を選ぶ案と同じ条件ではない |
確認日:2026年9月6日。参照した金額の説明本文では税込・税別の明記を確認できなかったため、表は掲載値のまま示しています。税区分と最新の適用条件は見積もり時に確認してください。出典:リフォームプライス公式FAQ、リノベる。公式「リノベーション費用・料金」。
この表の下限と上限をつなげて「70㎡の相場」とすることはできません。同じ会社でも、設備や素材の選び方によって価格が変わります。安い方に合わせて購入予算を組むのではなく、自分の希望に近い工事内容で概算を出してもらいましょう。60㎡・80㎡も含めて広さから考えたい方は、面積別のマンションリノベ費用を参照してください。
フルリフォームとスケルトンリフォームは同じではない
会社によって呼び方や工事範囲が異なるため、「フル」という名前だけでは、何を残して何を交換するのか分かりません。住戸全体の壁紙・床・設備を変える工事と、床・壁・天井を解体して下地からつくり直す工事を分けて考えると、見積もりを読みやすくなります。
| 考え方 | 工事内容の例 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 既存を生かす全面改修 | 全室の仕上げや設備を変えつつ、使える下地・壁・配管は残す | 残す場所と状態、配管などの交換範囲 |
| スケルトンからの改修 | 住戸内の床・壁・天井などを広く解体し、下地や間取りからつくり直す | 実際の解体範囲、配管・断熱の仕様、触れられない部分 |
| 部分改修 | 浴室・キッチン・LDKなど、目的に合わせて対象を絞る | 工事しない場所との境目、将来の工事との重複 |
スケルトンにすれば、すべて自由に変えられるわけでもありません。窓や玄関ドア、共用配管、構造に関わる壁などには制約があります。解体できる範囲と、水まわりを動かせる範囲は別に確認が必要です。購入前にはマンションでリノベーションできない場所も押さえておきましょう。
スケルトンの工事範囲に関する参考:ホームプロ「スケルトンリフォーム費用相場・事例」。掲載されている価格帯は、この記事の70㎡の予算目安には転用していません。
価格付きの公式事例で、工事内容の違いを見る
次の2件は、実際に公式サイトへ掲載されているフルリフォーム事例です。冒頭の会社別目安より低い金額ですが、施工時期・設備・解体範囲がそろっていません。現在、同じ面積なら同額で工事できるという意味ではなく、何を変えた事例なのかを見るために紹介します。
66.57㎡・596万円(税込):水まわりと住戸全体の仕上げを変えた事例
ポラスグループの住宅資材センターが紹介する足立区綾瀬のW様邸は、専有面積66.57㎡、工事費596万円(税込)。水まわり4点と床・壁紙を改修し、間取り変更も行った事例です。工期は67日と掲載されています。
ただし、施工年月はページ上で確認できず、床・壁・天井をすべて解体したか、配管や断熱まで工事したかも明記されていません。「フルリフォーム」として紹介されていても、スケルトン工事の予算根拠にはしない方がよい事例です。相談時には、この事例と同じ設備・仕上げの改修でよいのか、見えない部分まで直したいのかを分けて伝えます。
出典:住宅資材センター「足立区綾瀬 W様邸」。掲載金額は当該事例の工事費で、現在の定額プランではありません。
78㎡・約765万円(税別):キッチンの開放感と収納を変えた事例
Panasonicのリフォームショップ紹介サービスに掲載されたI様邸は、リフォーム面積78㎡、費用約765万円(税別)、2024年6月完工の事例です。キッチンまわりの壁を取り除いて対面型にし、和室をウォークインクローゼットへ変えています。
こちらもスケルトン工事とは明記されていません。「広いLDKにしたい」「収納を増やしたい」という希望を、どの工事で実現したかに注目してください。また、前の事例は税込、こちらは税別です。金額をそのまま並べて安さを比べると、条件の違いを見落とします。
出典:Panasonic「事例32 I様邸」。税区分・完工年月は掲載内容に従っています。別途費用の全内訳は同ページでは確認できません。
同じ広さでも費用が変わる、4つのポイント
1.壊す費用だけでなく、つくり直す費用が増える
解体範囲を広げると、廃材の搬出・処分に加え、床や壁の下地をつくる作業も増えます。「スケルトンにするための追加費用」を聞くときは、解体費だけでなく、その後に必要な工事まで含めて比較してください。
2.設備の交換と、設備の移動は別の工事
同じキッチンを選んでも、元の場所で交換する案と、対面側へ移す案では必要な工事が変わります。配管・換気・電気の経路や、周囲の床・天井の補修まで確認します。移動が可能かどうかは物件条件によるため、図面の上で配置が収まるだけでは判断できません。
3.設備・素材の自由度を上げると、調整箇所も増える
既製品でそろえるのか、寸法に合わせた収納や洗面台をつくるのかでも費用は変わります。最初からすべて造作にするのではなく、「玄関収納だけは寸法に合わせたい」「個室の収納は既製品でよい」など、こだわる場所を選ぶと予算を調整しやすくなります。
4.配管・断熱・下地の状態で、必要工事が変わる
見た目を変える工事と、傷みや不具合を直す工事は分けて考えましょう。設備のグレードを下げても、下地補修などの必要性がなくなるわけではありません。現地調査で分かったことと、解体後でなければ分からないことを分け、追加工事になり得る箇所を見積もり段階で聞いておきます。
見積もりは「一式の金額」より、含むもの・含まないものを確認する
安く見えた見積もりに設計料や搬出費が含まれておらず、後から総額が変わると、比較をやり直すことになります。候補会社には同じ要望を渡し、次の項目を確認してみてください。
| 確認する項目 | 会社へ聞くこと |
|---|---|
| 解体・搬出・養生 | 撤去する場所と残す場所はどこか。共用廊下やエレベーターの養生、廃材処分は含むか |
| 設備・配管 | 設備の型番、交換する配管の範囲、給湯器の扱いは決まっているか |
| 下地・断熱・電気 | 補修範囲、断熱の仕様、配線・コンセントの追加はどこまで含むか |
| 設計・現場管理・申請対応 | 工事費に含まれるか、別契約・別途費用か。管理組合への申請は誰が行うか |
| 税金・追加工事 | 税込総額はいくらか。解体後に工事が増えた場合、金額と着手をどう確認するか |
| 工事以外の出費 | 仮住まい、引っ越し、荷物保管、家具・家電などを別にいくら見込むか |
たとえば「キッチン交換込み」と言われても、食洗機や収納、周囲の壁・床、配管の交換まで含むとは限りません。「キッチンを新しくしたい」だけでなく、欲しい機能と変える場所を伝えると、比較しやすい見積もりになります。
まだ仕様が決まっていない項目は、仮の金額なのか、選び方によって増減するのかを確認します。契約前に決められない事項が残るなら、何が未確定なのかを書面に残してもらいましょう。
予算を抑えるなら、まず「残す案」も出してもらう
予算を下げたいとき、すべての設備を少しずつ安くするだけでなく、工事範囲そのものを見直す方法があります。ただし、傷みや不具合がある場所を見ずに残すのではなく、使える状態かを確認してから判断します。
70㎡の3LDKで、希望を3段階に分ける例
以下は実在の施工事例ではなく、見積もりを頼む際の整理例です。「水まわりが古い」「LDKを広くしたい」「収納も増やしたい」という家族を想定します。金額を置かず、同じ希望に対して何を変えるかを比較します。
- 残す案:使える個室と下地は残し、水まわりを元の場所で交換。LDKと廊下の内装を整える。
- 重点的に変える案:上の工事に加え、変更可能な間仕切りを見直してLDKと収納を整える。水まわりは大きく動かさない。
- 全体を組み直す案:配管や断熱の工事も含め、住戸全体の間取りから再検討する。スケルトンが必要な範囲を確認する。
3案を比べると、「希望のLDKは全面解体をしなくてもつくれる」「収納を増やすより、今の収納位置を変えた方が暮らしやすい」といった判断がしやすくなります。工事範囲の選び方はフルリノベと部分リノベの比較、金額を先に決めたい場合は予算別の工事範囲も参考になります。
中古購入と、今の家の改修では予算の組み方が違う
これから中古マンションを買う方は、物件価格に改修費を足しただけで予算を使い切らないようにします。購入の諸費用や引っ越し、工事以外の出費も必要です。購入後に希望の工事が予算へ収まらないと分かる前に、候補物件の段階で相談してください。詳しくは中古マンション購入+リノベーションの総費用で整理しています。
今住んでいるマンションを直す方は、工事範囲に加えて、住みながら工事できるかを最初に確認します。全面解体を伴う場合は、仮住まいや荷物の保管を含めた計画が必要です。部分工事でも、水道やキッチン・浴室を使えない期間があるかを聞いておきましょう。既に家を持っているなら、物件探しの支援より、工事内容と引っ越しを含めた進め方で会社を選ぶ方が実情に合います。
よくある疑問
500万円でマンションをフルリフォームできますか?
面積と残す部分によって変わるため、一律には答えられません。70㎡前後で水まわり・間取り・配管・断熱を広く見直す前提なら、500万円で全部を賄える計画にはしない方がよいでしょう。設備の一部と内装に絞るなど、今の予算で何を優先するかを相談します。
築年数が古いマンションは、必ずスケルトンにするべきですか?
築年数だけで決めるものではありません。過去の工事履歴、配管や下地の状態、希望する間取りを確認し、残せる部分と調べる必要のある部分を分けます。「古いから全部壊す」「きれいだから配管も大丈夫」のどちらにも決めつけないことが大切です。
見積もりを頼む前に、何を用意すればよいですか?
間取り図、分かる範囲の工事履歴、現在の写真、困っていること、残したい設備、希望時期を用意します。予算は工事費だけなのか、仮住まいや家具を含むのかも伝えましょう。資料がそろっていない購入前の段階なら、何を取り寄せれば判断できるかから相談して構いません。
まずは同じ条件で比較できる見積もりをつくる
マンションのフルリフォーム費用を比べるときは、「何㎡でいくら」だけでなく、「何を残し、どこまで直す金額か」を確認しましょう。スケルトンは工事方法の一つであり、目的ではありません。希望の暮らしがどの範囲の工事で実現するかを比べることが、無理のない予算につながります。
購入する物件や依頼先がまだ決まっていない方は、住まいの選び方診断で優先したい条件を整理できます。物件探しも含めて頼みたい場合は、ワンストップリノベーション会社の比較方法も確認してみてください。診断は工事費の見積もりや施工可否の判定を行うものではありません。
本文の価格・事例情報は2026年9月6日に公式掲載内容を確認しています。掲載事例の費用は当時の個別条件によるもので、現在の見積もりを保証するものではありません。


