結論:暮らせるが、希望を全部入れる広さではない
専有面積70㎡前後の中古マンションは、夫婦と子ども2人でも暮らせます。ただし、夫婦の寝室、子ども部屋2室、広いLDK、在宅勤務スペース、十分な収納をすべて独立させるのは簡単ではありません。
70㎡で4人家族が暮らせるかは、㎡数だけでなく、子どもの年齢、在宅勤務の有無、家具の量、現在の配管・窓・梁、希望する設備で決まります。この記事では、架空の家族を使ったシミュレーションとして、購入前にどの条件を確認し、何を諦めるかを整理します。
シミュレーションの前提
以下は実在の購入事例や特定会社の提案ではありません。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 家族 | 夫婦、未就学児、小学生の4人 |
| 住戸 | 専有面積70㎡前後の中古マンション |
| 面積表示 | 壁芯面積を想定。内法面積は物件ごとに異なる |
| 現状 | 3LDK、キッチン・浴室・洗面・トイレは築年相応 |
| 希望 | 家族で過ごすLDK、子どもの就寝場所、収納、在宅勤務の場所 |
| 働き方 | 夫婦の一人が週2日程度在宅勤務 |
| 目的 | 物件購入前に、実現できる暮らしと総予算の範囲を確認する |
この家族は「3LDKなら足りる」と考えて内見を始めました。しかし、図面に家具と生活動線を書き込むと、3室を確保するだけでは、在宅勤務と収納の場所が足りないことが分かります。
壁芯70㎡と、実際に使う面積は同じではない
広告の70㎡には壁や柱の厚みが含まれる表示方法があります。壁芯面積が70㎡でも、内法で測った部屋の面積は小さくなります。さらに柱型、梁、パイプスペース、玄関・廊下、水まわりの設備があるため、70㎡全部を家具や生活に使えるわけではありません。
内見では、次の寸法を測ります。
- リビングの有効な幅と奥行き
- ソファ、ダイニング、テレビを置く位置
- ベッドと収納を置いた後の通路
- 冷蔵庫、洗濯機、食器棚の搬入経路
- 玄関から各部屋までの有効幅
- 柱型・梁下・窓の位置
「70㎡あるから大丈夫」ではなく、家具を置いた後に4人がすれ違えるかで判断します。
案A:3LDKを維持する
既存の3LDKを残し、夫婦の寝室、子ども部屋2室、LDKを確保する案です。
できること
- 子どもが成長した後も、それぞれの部屋を使える
- 生活時間が違っても、寝室を分けやすい
- 水まわりの位置を大きく変えず、間取り変更費用を抑えやすい
諦める・注意すること
- 個室が小さくなり、ベッドと机を同時に置けない可能性がある
- LDKと収納が狭くなりやすい
- 在宅勤務の場所を個室として確保しにくい
- 廊下や各室の扉が多いと、家具の配置が難しくなる
この案は、家族それぞれの個室を優先する家庭に向きます。子ども部屋は「今すぐ2室」ではなく、将来分ける前提の一室にして、当初は共有する方法もあります。
案B:2LDKにしてLDKと収納を広げる
一室を取り込み、LDK、夫婦の寝室、子どもの共有スペースとして使う案です。
できること
- 家族が集まるLDKを広げやすい
- ファミリークローゼットや大きめの収納を検討しやすい
- 子どもの遊び場と学習場所をLDKの近くに置ける
- 在宅勤務用の机を一角に計画できる
諦める・注意すること
- 子どもが成長しても、独立した2室は確保できない
- 音やオンライン会議の問題が残る
- LDKを広げるために、壁を撤去できるか構造確認が必要
- 収納を造作しすぎると、面積が再び圧迫される
この案は、家族で過ごす時間と収納を優先する家庭に向きます。将来子ども部屋を分けるなら、窓、照明、コンセント、空調、出入口を先に計画します。
案C:可変間取りにする
引き戸、家具、カーテン、可動間仕切りなどで一室の使い方を変える案です。
できること
- 子どもが小さい間は広く使い、成長後に分けられる
- 在宅勤務時だけ一部を仕事場にできる
- 固定壁を増やさず、広がりを残せる
諦める・注意すること
- 防音とプライバシーは固定壁より弱くなりやすい
- 引き戸や家具を動かす手間がある
- 分けた後の照明・コンセント・空調が必要
- マンションの構造、窓、梁、管理規約で実現方法が変わる
4人家族の70㎡では、案Cが現実的な落としどころになる場合があります。ただし「可変」と書いてあっても、完成後に簡単に2室へ分けられるとは限りません。購入前に、将来の状態を図面へ描いて確認します。
予算シミュレーション:総予算から逆算する
ここでは、物件価格を3,800万円、購入諸費用を300万円、入居準備費を150万円と仮置きします。金額は特定地域の相場や個別見積もりではなく、予算配分を考えるための架空モデルです。
| 項目 | モデル金額 | 確認すること |
|---|---|---|
| 物件価格 | 3,800万円 | エリア・築年数・階数・管理状態 |
| 購入諸費用 | 300万円 | 仲介、ローン、登記、税、保険など |
| 仮住まい・引っ越し・家具 | 150万円 | 工期と既存家具の扱い |
| リノベ工事予算 | 1,200万円 | 設備、間取り、内装、収納、諸経費 |
| 予備費 | 200万円 | 解体後の追加工事や仕様変更 |
| 総額 | 5,650万円 | 借入額・自己資金と照合 |
2026年8月に確認した公式情報では、70㎡のフルリノベーションは約1,050万〜1,400万円という試算がある一方、リノベる。の首都圏におけるオーダー型実例は約1,600万〜2,200万円、仕様を厳選した商品は約1,100万〜1,300万円です。このモデルの1,200万円は後者に近い予算であり、「何でも実現できる予算」ではありません。キッチン・浴室・洗面・トイレの交換、間取り変更、断熱、造作収納、高価格帯の素材を重ねると、範囲や仕様の調整が必要です。
工事予算1,200万円の3つの配分例
| 配分 | 優先する工事 | 後回しにする工事 |
|---|---|---|
| 暮らし優先 | 2LDK化、収納、家事動線、標準設備 | 造作家具、素材のグレード、設備の一部 |
| 性能優先 | 配管、窓・断熱、換気、劣化部分 | 大きな間取り変更、造作、設備の一部 |
| 個室優先 | 3LDK維持、子ども部屋、電気・照明 | LDKの拡張、造作収納、設備移動 |
見積もりでは、設備本体と工事費だけでなく、解体・搬出、給排水、電気、換気、床や壁の復旧、設計・現場管理、諸経費、消費税を分けます。
物件価格が上がったとき、工事費を先に削らない
同じ総予算5,650万円でも、希望エリアの物件が4,500万円なら、上の配分では700万円不足します。そのときに工事費を500万円へ落とすと、全面的な間取り変更や配管・性能改善まで想定した計画とは別物になる可能性があります。
比較する順序は次のとおりです。
- その物件で必須になる工事と概算を確認する
- 購入諸費用・入居準備費・予備費を取り分ける
- 残額で買える物件価格を算出する
- 希望エリアで難しければ、面積・築年数・駅距離・エリアのどれを調整するか決める
物件価格を優先するあまり、配管や下地など入居前に済ませたい工事まで外すと、住み始めてからの再工事につながります。一方で、造作家具や一部設備のグレードは、入居後に追加・交換できる場合があります。
「借りられる額」と「無理なく返せる額」は別に考える
金融機関が提示する借入可能額は、家族が安心して使える住宅費の上限ではありません。住宅ローンの返済額に加え、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災・地震保険、駐車場、将来の修繕費がかかります。
家族の予算を考えるときは、まず次を月額で並べます。
- 住居費(ローン、管理費、修繕積立金)
- 教育費と保育費
- 食費、衣服、通信、保険
- 旅行・娯楽・帰省
- 車や自転車、通勤・通学
- 生活防衛資金と将来の貯蓄
「借りられる限度額まで借りて工事費を増やす」のではなく、暮らしに残したいお金を先に決め、物件価格と工事予算を調整します。
購入前に会社へ確認すること
候補物件を購入する前に、ワンストップ対応会社などへ次を確認します。
- 70㎡のどの範囲を壁芯・内法で見ているか
- 案A〜Cのどこまで実現できるか
- 撤去したい壁が構造壁ではないか
- 給排水・換気・電気容量の制約は何か
- 管理規約、工事申請、共用部の制限は何か
- 見積もりに含まれない工事は何か
- 解体後に追加費用が発生する条件は何か
- 工事中の検査、現場管理、引き渡し後の保証はどうなっているか
会社には、希望の間取りを文章だけでなく、家具、収納、仕事場所、子どもの成長後の使い方を書き込んだ図面で渡します。
この家族が最後に選ぶなら
このモデル家族が「家族で過ごすLDK」「収納」「将来の子ども部屋」を優先するなら、案Bまたは案Cが候補になります。ただし、在宅勤務を毎日行うなら、LDKの一角では会議音と生活音が衝突するため、案Aの一室を仕事場と兼用する方が合う可能性があります。
逆に、子どもがそれぞれ独立した部屋を必ず使う、夫婦の在宅勤務が重なる、大型家具が多い場合は、70㎡では希望を削るより、80㎡前後の物件やエリアの見直しも比較します。広い物件へ移ると購入価格も上がるため、物件価格・工事費・毎月の住居費を一緒に再計算してください。
まとめ
70㎡・4人家族は、暮らし方を整理すれば十分検討できます。ただし、3LDK、広いLDK、個室2室、在宅勤務、十分な収納をすべて独立させるのは難しいケースがあります。
大切なのは、購入後に「思っていた間取りができない」と気づかないことです。物件購入前に、家族の優先順位を案A〜Cへ落とし込み、現地調査、管理規約、見積もり、総予算を確認します。
面積別の全体像は60㎡・70㎡・80㎡のマンションリノベ費用・できること比較へ、総費用の考え方は中古住宅購入+リノベーションの総費用へ進んでください。家具を置いた後の有効寸法は家具配置から考えるマンションリノベーションで確認できます。
参考にした公式情報
- 国土交通省「マンション総合調査を利用するにあたっての参考情報」 https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000025.html
- 国土交通省「マンション標準管理規約」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansionkiyaku.html
- ゼロリノベ「マンションリノベーション費用の相場はいくら?広さ別・内訳・事例から解説」 https://www.zerorenovation.co.jp/works/contents/real-renovation-cost
- リノベる。「リノベーション費用の相場」 https://www.renoveru.jp/contents/price
- リノベる。「アートが映えるミニマル空間」 https://www.renoveru.jp/renovation/349
- KULABO「フルリノベ費用の相場」 https://kulabo.co.jp/columns/152
- KULABO「静かなRhythmにとけこむ家」 https://kulabo.co.jp/works/235
確認日:2026年8月29日


